13周年を迎えて

今年もイタリアでミシュランレストランガイドの発表がありました。
修行した今はなきレストラン、『リゴレット』のマダムのフェイスブックの投稿で知りました。

 

『今年もほんの少し辛い気持ちになった。』

マダムは自分たちのレストランの道のりをダンテ・アリギエーリの『神曲』に例えて書いていた。

『神曲』の中でダンテが煉獄山の段階を一段一段上り浄化されて、山頂の地上の楽園に出て星を見る様のように、

『曲がりくねった道のりは長く、乗り越えるべき障壁が沢山あった。
ダンテが煉獄から出て行ったように、、私たちも「星」をもう一度見に行こう。』

僕の修行先、
最初のレストランは当時は1つ星の『オステリア・フランチェスカーナ』。

ここずっと3つ星を維持し、サンペレグリーノの世界最高のレストランに選ばれ、世界で最も予約困難なレストランと呼ばれる。

ボランティア活動も行い、世界中を飛び回るマッシモ・ボットゥーラは飲食業界では最も有名なシェフの一人だ。

当時働いていた時に、確かに勢いは感じたが、ここまでになるとは思わなかった。

『フランチェスカーナ』で働いた後、僕は『リゴレット』に移り、その秋にはリゴレットは1つ星から2つ星に。

1年遅れて、その翌年、『フランチェスカーナ』も1つ星から2つ星に。

2012年5月、エミリア・ロマーニャ州を地震が襲った。

シェフの50歳の誕生日近く、レストランをオープンして25周年の年。

祝うどころではなくなってしまった。

『リゴレット』は、中世からの貴族の館を改装してレストランにしていて、

オーナーから借りていた。

それをやっと買取り、隣接するホテルも買い取って数年。

すべてが20秒でなくなってしまった。

 

すべてを失ったシェフの家族は、いつか『リゴレット』のあったレッジョーロに戻ろう、と決心し、誘いのあったレッジョ・エミリアで『カフェ・エ・アルティ・メスティエレ』というレストランを任せられることになった。

だが、もうレッジョーロには戻らないと決めた。

ここレッジョ・エミリアで、新たに『rinache』、『再び生まれる』(ルネッサンスの語源)、震災から立ち直った象徴になるべく、この地で頑張ろう、と。

新聞のタイトル

「『失った星』を取りに行く。『復活』の象徴となるべく」

そんな記事を読んだ。

 

初めてイタリアを訪れた時から15年。

『リゴレット』はなくなり、『フランチェスカーナ』は有名店に、もう一軒働いていた郷土料理の店は別のオーナーの所有になっていた。

『リゴレット』に移った初日から一緒に働いていた友人は、僕より遅く帰国し、自分の店を銀座にオープンしたと報告を聞くも、これからという時に突然亡くなってしまった。

住んでいたモデナも、経堂の街も、色々変わった。

今シェフに会いたい、後悔したくない、と去年オープン12周年の時に再びイタリアを訪れた。

そして、13周年を無事迎えることができました。

日々の変化を受け入れながら、今あることに感謝し、精進していきたいと思います。

手打パスタ、色々

修業先、イタリアのエミリア・ロマーニャ州は手打ちパスタが有名です。

一般的に南イタリアは乾麺、北は卵の入った手打パスタがよく食べられると言われていますが、北を流れるポー河流域は稲作地帯で、よくお米料理も食べます。ミラノでは黄金色のサフランとパルミジャーノのリゾットが代表的名物料理になっていますし、ヴェネチアでは魚介のリゾットやイカ墨のリゾットも有名です。

これは小海老とパプリカのリゾット。サフランのソース。ディナーでお出ししています。

エミリア・ロマーニャを代表するパスタは、ボローニャのタリアテッレ・アル・ラグー、ボロネーゼと言われるミートソースの手打タリアテッレが代表的です。

店でもよく出しています。

ランチでもお出ししているラグーのタリアテッレ

そして薄く伸ばしたパスタとパスタの間にお肉ラグーとベシャメルソースを重ねてオーブンで焼いたラザニア。

これはイタリア全土の家庭で食べられる家庭料理でもあります。
野菜だけのラザニア、魚介のラザニア、リコッタチーズのラザニア。
色々あります。寒い時期に熱々を食べるのが美味しいですね。

 

こちらは店で作ったカペレッティ。エミリア・ロマーニャを代表する詰め物パスタです。

帽子のような形から、帽子型パスタなどとも呼ばれています。
ほうれん草とリコッタを包んだものやカボチャをペースト状にして包んだものが人気です。家庭でも作りますし、お惣菜やパスタ屋さんのショーウィンドーにこの詰め物パスタは並んでいます。

これはモデナの市場のお惣菜屋さん。手作り手打ちパスタやニョッキが並びます。

宮崎の霧島高原純粋黒豚のカペレッティ アスパラガスのソース ディナーのメニューです。

トルテリーニ・イン・ブルードという、スプーンに8個ものる位小さな肉を詰めたパスタを丁寧に作ったブロードとともに食べるのも冬のエミリア・ロマ―ニャでは外せない一皿です。

まだまだ色々なパスタをその季節の食材と合わせてご用意しています。
続きは、また別の機会に。